そう思ったのも束の間、たまたま入った居酒屋で事件は起こった。
「え…奏ちゃん……なんでここにいるの?」
トイレに向かう私と、レジに並び仲良さげに腕を組む2人の男女。
「今日友達と遊ぶって言ったよね。ここにいちゃダメだった?」
明らかに様子のおかしい彼氏。
「太輔くん、どうしたの?あっ、お友達?」
「こんばんは。私たち、『ただのお友達』です」
「そうなんですね!私、太輔くんの彼女の理沙って言います!」
「あはははははは」
「あは、はは…奏…ちゃん?」
まさかこんな修羅場的展開とは無縁だと思ってた私が。
「理沙ちゃん……?」
「はい?」
「可愛いから心配ないだろうけど、二股されないように気をつけてね」
私はそう微笑んで彼氏の前を横切った。
「太輔くんのお友達も美人さんだね!」
後ろでそんな声が聞こえた。
…………言っちゃ悪いけど、私あなたより可愛いから!!!
ーバン!
トイレのドアを勢いよく閉め鏡に写った顔を見る。
確かに、私の方が可愛い。
しかし幸せそうに笑うあの子の顔が脳裏を横切る。
…私、あんなに幸せな顔して笑ったことあるかなぁ。
きっと…いや、絶対に無かった。
鏡に向かって微笑んでみる。
…ひっどい顔。性格の悪さが滲み出ているようで嫌い。
人からはそれなりに可愛いと言われてきたし、スタイルだって悪くない方だと思ってる。
きっと外見は上の中ぐらい。
自分で言うのもどうなんだって感じだけど、一般人にしてみたらいい方なんじゃないかな。
上の上はモデルや女優だったり、有名人のレベル。
まぁそこまでは行かないけど読モくらいかなぁっていう自己評価。
自己評価高すぎって思うだろうけどスカウトもされてきたからね。
って、あぁ……こんなところなのかな。
男の人も私のこのうちに秘めた闇を察しているのかな。
だから…付き合ってもダメになるのかな。


