episode1「イケメン5人とシェアハウス始めました。」



「えっくん!もう少しで新しいおうち着くよ!」

『おうち??』

「うん!お・う・ち!えっくんとお姉ちゃんが今日から一緒に住むところだよ〜!あ!でもお姉ちゃんと笑紅だけじゃなくて、他にも一緒に住む人がいるから楽しくなるね!」


て言ってもあんまり詳しいこと
聞かずに返事しちゃったからなぁ。

聞いたといえば私達の他に
すでに5人が住んでいることぐらいで…。

シェアハウスのこと
叔母さんにもっと聞いとけばよかったなぁ。


"みんないい人たちだよ"
っては叔母さんが言ってたから
大丈夫だと思うけど…。


「まぁ、なんとかなるか!楽しみだね!えっくん!」


『うん!パチパチパチ〜!』



抱っこした腕の中で
きゃっきゃと手を叩きながら
喜ぶ笑紅を見ていると
こっちまで嬉しくなる。


なんか笑紅も重たくなってきたな〜。
あんなに小さくて軽かったのに。

こういうふとした瞬間に
笑紅の成長を感じる事が多くなった。


『ねーね!』

「なーに?えっくん。」

『えく、あゆく!』

「歩くの??よし!新しいおうちまで頑張ってみよっか!がんばってくれる人〜?」

『はーーい!』

「うわぁ!えっくんカッコイイ!!」

『えく、かこい??』

「うん!とってもカッコイイ!」


というと自慢げに歩き始める笑紅。
はぁ…可愛すぎるだろ。うちの弟。


私の人差し指を笑紅が握ってる状態。


この時ちょっとだけ中腰気味になるので
あとあと腰にダメージが来るけど
可愛い弟のためならお姉ちゃん、
腰なんて一個でも二個でもくれてやる!


「いっち、に〜!いっち、に〜!」


ギュッと握られた私の指。
ポテポテと進む笑紅はお腹がポンと
出ていて可愛らしい。


……いやめっちゃ可愛い。
お気づきかもしれないけど
私はブラコンです。
うちの笑紅が世界で1番可愛いと
本気で思ってる。





…もうだいぶ歩いたかな?


『ねーね、えく、ちゅかれた!』


手を広げて抱っこしてポーズ。



「疲れちゃったか〜よしおいで!よっこいしょ〜えっくん、がんばったね〜!」

『えく、がばたね!』

「うん!とってもがんばったね!」


だいぶ歩いたせいか笑紅の体は
いつも以上にポカポカで温かい。


「あれれ、もう少しで着くと思うんだけどな〜。」


叔母さんが書いてくれた
地図をもう一度見る。


周りをチョロチョロするけど
シェアハウスらしき建物は見当たらない。


「あれ?この辺じゃないのかな?えっくんごめん。もしかしたらお姉ちゃん迷子かも…。」

『まゆご〜??』


大通りから1本入っただけなのに、
人がぜんぜんいない。

しかも今日は土曜日の夕方。
みんなお買い物とか行かないの?!
ほんとに人っ子一人いない。


「どうしよう…。早くしないと暗くなっちゃう。」

『あの〜、大丈夫ですか??』

「えっ?!」


心が折れそうになっていた時
後ろから声をかけられた。

振り向くと……
そこにはなんとまぁ!
高身長なイケメンが
立っているではありませんか!


『何かお困りですか??』

「えっと、ちょっと道に迷ってしまって…。」

『あらま、迷子ですか。』

『ねね、まゆご!』

『あはは!お姉ちゃん迷子なのか〜!』

「はい……恥ずかしながらその迷子ってやつです。」

『僕この辺に住んでるので、よかったら案内しましょうか??』

「え?!ほんとですか?!」


待ってくれ。イケメンな上に
優しいだなんて神様かこの人は!
いや、イケメンだからじゃなくて
優しさが神様級ってことだよ?
……いやイケメン度も神様級だな。うん。

ひとまずイケメンな神様に
シェアハウスまでの地図を見せる。


「ここに行きたいんですけど…ご存知ですか?」

『ここですか?』

「はい……?もしかしてもう1本向こうの道だったりしますか?!」

『いやこの道で合ってますよ!案内します。』

「えっ?!いいんですか神様!?」

『神様??』

「あっ!?いえ!なんでもないです!」

思わず口がすべってしまった。
……恥ずかしい。


『荷物持ちますよ。』

「いやいや!そこまでしていただく訳にはいきませんので!」

『弟くんも抱っこしてるのに、大変でしょ?』


そう言って彼は私が持ってた荷物を
持って歩き出した。


「すみません。荷物まで持ってもらって…。」

『全然大丈夫ですよ。僕の家もこっちだし。』

「そうなんですね〜!なら、ご近所さんかも!」

『ご近所よりもっと近いかも。』

「え?」

『迷子さん、着きましたよ!』

「わぁお。」


フェアハウスの近くまで来ていたらしく
予想以上に早く到着した。

イケメンな神様が立ち止まった先には
大きな白い今風なおうちが。


「本当にありがとうございました!あっ!荷物…」


と荷物を返してもらおうとしたけど
なかなかイケメンな神様は返してくれない。


「あの〜…荷物を…。」

『ふふっ。僕の家もこっちって言ったじゃん?』

「はい、確かに言われてました。」

『僕の家もここなんだ。よろしくね!迷子さん改めて、天野 笑美さん。』

「えっ……えぇ!!!?」

『あっはっはっ!さっきからリアクションが最高だね!これからシェアハウスがもっと賑やかになりそう!』

「……えっ!あっ。あの……あ!よろしくお願いします!!」

『うん!よろしくね!ほら、早く入ろ?』

「あっ、はい。」


まさか。まさかだった。
イケメンな神様とご近所かもしれないと
胸を高鳴らせていた数秒前の自分に
このドラマみたいな展開が
予想出来ただろうか?


『ようこそ。今日からここが君たちのおうちだよ。』


中に入て廊下を抜けると
広々としたリビングと
ダイニングキッチン。

リビングのすぐ隣には扉が3つ。
そして2階にまた3つの扉。
2階へはリビングの端にある
階段からいけるらしい。


「あっ!あの!ほんとに助かりました!改めまして今日からお世話になる天野 笑美です。そして、弟の笑紅です!よろしくお願いします!」

『よろしくね。僕は中村 月海|《なかむら るう》です。笑美ちゃんと同じ高校の3年生。困った事があったら何でも言ってね。笑紅くんもよろしくね〜!!』


頭をポンポンと撫でてくれた
中村先輩に笑紅もニッコニコ。


「えっくん、よかったね!頭ポンポンされちゃって〜!」

『ポンポン!!』


中村先輩は鼻が高くて
目が大きくて髪の毛もサラサラ。
瞳の色は淡く綺麗な茶色。
まるでハーフのようなお美しいお顔。


「先輩ってハーフですか??」


いきなり何聞いてんだ!
って自分の中で突っ込んだけど
もう口から出た言葉は回収出来ず…。


『よく言われるけど純日本人なんだよね〜!生まれつき色素が薄いのが言われる原因なのかな?』


なんて微笑む中村先輩はまるで絵画。


「いや、きっとそのお美しいお顔を見て皆さんハーフだと間違うんだと思います!」

『ふふっ、ありがとう。必死にそんなこと言われたらなんだか嬉しいけど照れちゃうよ。』

「あっ、すみません。つい美しさを熱く語ってしまいました…。」

『今のは専門家並の熱弁だったね!』


なんて笑ってる先輩はやっぱり絵画。

イケメンな中村先輩に
笑っていただけるのなら
何回でも熱く美を語りますとも…。




『ごめんね、歩いてきて疲れてるだろうにずっと立ち話しちゃて!ここに座って!お茶を入れてくるから。』

「いやいやいや!ちょっと歩いただけですし!お気になさらず!!」

『いいの。あんなにおっきいバックにたくさん荷物入れて、持つだけでも大変なのに、笑紅くんまで抱っこして来たんでしょ?ちょっとは休憩しないと!それにここはもう2人の家なんだから遠慮したら怒るよ?』


怒るよ?というセリフとは裏腹に
優しい目で話してくれる中村先輩。



「…ならお言葉に甘えて……。」



キッチンの隣にある
ダイニングテーブルの椅子に
笑紅を膝の上に乗せて座る。


「あっ、えっくんもお茶飲もっか!」

『えくも、ちゃちゃのむ!』

「ちょっと待ってね〜!」


中村先輩に運んでもらった
バックから笑紅のお茶を取り出す。


「はい、えっくんどうぞ!」

『あーがと!』


両手で水筒のコップを持って
ゴクゴクとお茶を飲む笑紅。

喉乾いてたんだなぁ。
ごめんね、我慢してたんだね…。


『はい、笑美ちゃんもどうぞ。』

「すみません。いただきます!」


中村先輩がくれたお茶は
冷たくて歩いて火照った体の
すみずみまで染み渡っていく。


『あっ!そうだ!他のメンバーも紹介しないと!2人のことは大家さんから事前に軽く紹介されてはいるんだけどね。』


そうだった!ここシェアハウスだった!
なーに呑気に中村先輩に
お茶出してもらってんだ!

ろくに挨拶も出来てないのに!


「すみません!皆さんにご挨拶もせずにお茶もらっちゃって!」

『気にしないで!お茶出したの僕だし!他のメンバー、呼んでくるから座って待ってて!』


先輩は階段を上がって2階へ。

1番左の赤いドアをノック。
そしてその隣の
青いドアをノック。


出てきたのは、
またまたイケメンな2人!!

おいおい待ってくれ。
聞いてないぜ?
5人中3人がイケメンだなんて!?

飲んでいたお茶を
吹き出しそうになるのを必死で堪える。


『お待たせ〜!』

勢いよく立ち上がって。

「は、はじめまして!えっと…今日からお世話になる天野 笑美です!えっ、あ、えっとそして、弟の笑紅です!よろしくお願いします!」

『よろしくね。俺は、多田 夏鈴|《ただ かりん》。月海と同級生。あの赤いドアの部屋にいるからなんかあったら呼んでね。』

「よっよろしくお願いします!」

さっきから全然目が合わないけど
もしかして引越しそうそう嫌われた?!

それにしても…イケメンだな。

多田先輩は黒髪でお目目クリクリの
いわゆるベイビーフェイスイケメン。
前髪をポンパドールしててなんだかお茶目。
まつ毛長すぎです。分けてください。


『ごめんね、笑美ちゃん。夏鈴ただ単に緊張してるだけだから。気にしないで。』

『おい!月海!それは言わない約束だろ?!』

『いやいやいや!約束してないし!』


同級生なだけあって2人とも
仲良しなんだなぁ〜。


『ちょちょちょ!?俺、自己紹介してないのに先輩たちだけで盛り上がるのやめてもらっていいですか?!』

『あっ、ごめんごめん、来良。』

『月海先輩、絶対俺の事忘れてたでしょ!!』

『いーから!早く自己紹介しろって!』

『もぉ〜、夏鈴先輩まで〜!』


…確か青いドア人だ。


『俺は中条 来良|《なかじょう らいら》よろしくね!!同い年だからタメ口でいいよ!来良って呼んで!!あとさ、早速だけど笑美と笑紅って呼んでいい?』

「えっ?!はい、あ!うん!いいよ!」

『ありがとう!!改めてよろしくね!笑美、笑紅!』

「よろしくね、来良!」


人懐っこい人だな〜!
来良は色白で綺麗なシュッとした顔をしてる。
黒髪でテクノカット。
部屋着もそれ部屋着?ってレベルで
オシャレな来良。
この最強に人懐っこい感じは
犬系って世で呼ばれるイケメン。


2人の紹介も終わって、
残るはあと2人。


「あれ?あの〜あとのお2人方は??」

『あとの2人は、仕事と大学からまだ帰ってきてないんだ。たぶんもう少しで帰ってくると…あっ!噂をすれば帰ってきた!』

『ただいま〜!』

『ただいま…って、え?どした!?』



廊下の方を見ると、背が高い2人が。

しかもまたまたまたイケメンだとぉ?!
叔母さんにちゃんと聞いとけばよかった…。
どうしよう……目のやり場に困るって!
今の私の状況、
四方八方イケメンパラダイスだからね?!


『これで全員だね!2人ともちょっとこっち来て!』


中村先輩に呼ばれて
今帰ってきたイケメン2人が
私の方に歩いてくる。


『事前には聞いてたと思うけど紹介するね?今日から一緒に暮らす天野 笑美ちゃんと笑紅くんです!』

「あ、天野 笑美です!そして弟の笑紅です!よろしくお願いします!」

『よろしくね!笑美ちゃん、笑紅くん!俺の名前は園田 志恩|《そのだ しおん》です。21歳でこの中では一応最年長やってます!』

「よろしくお願いします!」

『あっ、俺ね笑紅くんが通う予定の保育園で働いてるから笑紅くんの送り迎えとか俺に任せて!』

「えっ?!保育園の先生なんですか?!」

『う、うん!そんなに驚く?!』

「いや、子供たちからプロポーズされまくりだろなぁと思いまして……。」

『はっは!!面白いこと言うね!』


また私のお口は思ったことを
すぐに言ってしまう……
ガムテープでも貼っとく?

園田先生?って呼んでいいのかな?
園田先生は高身長で肩幅もしっかりしてる。
茶髪のくせっ毛でクシャッと
笑った顔がなんとも愛らしい…。
こりゃ女の子たち毎日プロポーズだわ。
ママさん達の話題の中心もきっと先生だな。



『あっはは!面白い子だね。僕の名前は渡邉 海人|《わたなべ かいと》。20歳の大学生。好きに呼んで、よろしくね。』

「なら……渡邉先輩と呼ばせていただきます。よろしくお願いします!」

『なら、僕は笑美ちゃんと笑紅くんって呼ばせていただきます!』


ひゃーーー!なんだこのスタイルは!
足なっが!顔ちっさ!!
渡邉先輩は明るい茶髪の
サラサラストレートヘアー。
時折、長い前髪から覗く瞳は
色っぽいのにまだ顔にはあどけなさが
残っていて可愛らしいお顔。


この状況で冷静に2人の解説をした私。
……メンタル強すぎる。


てか…この状況やばくない?!
今から私、5人のイケメンと
毎日生活するの?!


叔母さん…心の準備ってもんがあるから
少しくらい教えてくれても
良かったじゃん…。

叔母さんには感謝してもし切れないほど
良くして貰ってるから
なんにも言えないけど……。



これからどうなるんだぁーー!!