ここはとある大企業。社員たちが楽しそうに仕事をしている中、ただただ真剣に仕事をしている1人の女性。会社の行事には一切顔を出さず、いつも1人でいる女性の名前は小波雫、25歳。この年にして仕事は完璧、仕事中の私語は一切ない。とういか会社で話しているところをみたことがない。だから声もわからない。もう少し気を抜いてもいいんじゃないか?と思うことが何度もあった。誰よりも早く会社に来ては誰よりも遅く家に帰る。そんな女性の誰も知らない一面を俺は知ってしまったのだ。一方的に。ただ一方的に。


「おはようございます。」
朝早くに会社に行き1人でディスクに向かって黙々と仕事をしていた女性に挨拶したのは背が高く、メガネをかけた1人の男性だった。
「ちょっと無視ー!無視しないでよ〜。」
その男性はその女性が絶対に人と関わらないのを知っていて迷惑にもずっと話しかけた。2時間も一方的に話しているとその女性はすごく迷惑そうな顔で
「うるさい」
ただ文句を言った。それだけなのに何故か男性はすごく嬉しそうに笑っていた。
「ありがとう」
しかも何故かお礼まで言って。
「あの、なんですか?用がないならどっか行ってください。」
文句を言ったのに不本意にも笑って返された女性はそう言ってまたディスクに向かって黙々と仕事を始めた。
そんな時
「あーそれわかる。可愛いよね!」
「本当だー人気のやつ。いいなー」
楽しそうに話をしながら入って来た2人の女性は男性を見た瞬間、話をやめて男性の前に立ち揃って
「おはようございます。」
「社長」
女性はびっくりした表情で男性を見て思い出した。
「あーあ。ばらさないでよー。」
砕けた話し方で全然気づかなかったけどよく見たら
「よくテレビに出てる人」
「えっ!」
「あーいえなんでもないです。あのっすみません社長」
女性は思わず声を上げてしまいそれに驚く男性。
「えっとー改めまして、僕は光明煇。ここ光明グループの社長です。」
なんでもないかのように自己紹介する男性に女性はすごく慌てていた。それはもう普段の様子からは窺えないほどに。