その声がする方に振り向くとやっぱり嫌な予感は的中した
なんで、今、このタイミングで、どうしてここに、
思うことはたくさんある。
「…誰だお前。」
蓮がワントーン落として尋ねる声でハッとする
きっとコイツは、あたしの目の前にいる遠山は嫌がらせをしてくる
それはみんなには知られたくない事実。
誰にだって触れてほしくない過去の1つや、2つ、あるだろう
頭の中でサイレンが鳴り響く、今すぐこの場から離れないと大切なものを失うとうるさくなり続ける
「あんた、春山の彼氏?じゃああの事も知ってるってこと?」
やめて、お願いだから言わないで。
今すぐにでも蓮の腕を引いて走り出したいけど体は言うことを聞かない
「あ?」
蓮の不機嫌な声が響き渡る
ニヤッと笑って遠山は口を開こうとする
「そいつのお「やめて!!!遠山!!」
過去が消えるわけじゃない、変えられるわけじゃない
それは嫌ってほどわかってる
ここに来るまでのあたしがどれだけ歯を食いしばってあんたらの嫌がらせを耐えてきたのか知らないでしょ?
あたしがどれだけの思いをしたのか知らないでしょ?
ー…壊されたくない
そう思うようになってしまったあたしは欲張りになったのだろうか?
「蓮、行こう。早く帰ろう。」
「待てよ、その様子じゃ言ってねぇんだろ?」
蓮の腕を引いて去ろうとすることを許さないかのように、小走りで退路を塞がれる
「…退いて。」
どうして遠山はこんなに執着してくるのか、人を嫌がることをしたがるのか、理解ができない
でも、過去はあっけなく晒されてしまう
