敦先輩が前を歩きあたしを挟んで後ろに波瑠が歩く
その間も神獣じゃない人たちからジロジロ見られていた
そんな視線を感じつつもとりあえずいつもの部屋に入ると敦先輩が振り向いて困った顔で笑う
「ごめんね、ジロジロ見られて嫌だったでしょ?」
「いえ、大丈夫ですよ」
あたしもつられて困ったように笑ってしまう
その瞬間盛大な舌打ちが聞こえてきた
それは何度も聞き覚えのある舌打ちで聞こえてきた方をバッと見る
「…蓮」
「んだよ、コイツ来ないんじゃねぇのかよ」
「だってそういわないとお前が来ないじゃんか」
蓮の言葉に波瑠が返す
また舌打ちを一つ蓮が返すと今度は立ち上がりあたしに向かって歩いてくる
「おい、どこに行く。」
慎の視線が蓮に突き刺さる
「あ?帰るんだよ」
「いい加減にしろ。」
蓮の答えに慎がピりつくのが空気を通じてわかる
「別に俺がいてもいなくても話はできんだろ」
「それじゃ示しがつかねぇだろ。」
「じゃあ、コイツを帰らせろよ」
「それはやだね、お前もいつまで意地張ってんだよ!」
波瑠も蓮を睨みつける
「は?小動物のくせに何俺様に盾突いてんだよ、シバくぞ」
「…誰が小動物だって?いい加減にしろよ。このガキ!いつまで意地張ってんだよ!別にいいだろもう!千晃だってこうして来てくれてんだし!お前に呆れずに来てるんだから大丈夫だろ!意地張ってんのはお前の方だ、バカ蓮!」
あぁ、やっぱりそうか。
あたしが原因なのか、みんながこうして喧嘩しているのも言い合っているのも
多分今話さなかったらまた蓮に逃げられてしまう
だから今全部決めた。
「蓮…」
そう名前を呼ぶだけで蓮の肩がビクッと揺れる
こういうのはしっかり目を見て言わなきゃダメだろうなって思った、だからあたしの横を通り過ぎようとしていた蓮の前に回り込む
そして、しっかり目を見て言い放つ。
心からの謝罪とこれからのこと。
「蓮、この間は助けてくれてありがとう。それから伸ばしてくれた手を拒否ってごめん。今まで何度もたくさん助けてくれてきた手を拒んでごめん。でも、それでもあたしは蓮の傍に、皆の傍にいたいと思った。だからあたし、覚悟決めたよ。みんなが喧嘩するのもみんなが傷つくのももう二度と目を逸らしたりしないから。あたしもみんなと一緒に闘うから。」
ここまでほほ一息で捲し上げる
「だから、これからも出来るならこのまま一緒にいさせてほしい。」
ー…出来るならずっと
最後の方はみんなに向けてじゃない、誰に向けてでもない。
ただの、ただの独り言だ
そんなことに思いを馳せていると急に腕を引っ張られる
「…ちょっとこいつ借りるわ。先に進めとけ。必ず戻る」
「フッ…ほどほどにな。」
「あぁ。わりぃーな。」
え、ちょっとちょっと。
今あたし結構いいこと言ってたよね?なのに急になんで蓮に腕を引っ張られて外に連れ出されてんの?
しかも出る前の今までの喧嘩はなかったです、みたいな顔して慎と頷きあってんの?え?イマイチわかんないんだけど
でもそんな中、外を出る時ほんの一瞬だったけどみんなが笑ってたから
黙って蓮に引っ張られることにした
