走りながら目の前にいる蓮を見る


でも観察すればするほど違和感が湧き出てくる


いつもは暗い夜でも性格通りの自己主張激しい髪が鮮やかに光ってるのに今あたしの手を引いて走る人は禍々しく濁って見えた


それに手がやっぱり尋常じゃないくらい冷たい。


あたしに触れる手はいつだって温かかった
ネックレスを渡してくれた時も、部屋を出ていく時に髪を撫でた手も、その他にも少し触れただけでも全て温かかった


だから、余計に目立つのだ。
この冷たさが。



「…ねぇどこに向かって走ってるの?」



慎は大通りに出ろと、波瑠も大通りに出ろと言った



「…いいから、黙って走れ」



あぁ、やっぱり違う。


いつものような乱暴な言い方だけど違う。
蓮はそれでも優しさが伝わってくる声だ。


でもこの人の声は冴えきっている
温かさも優しさも何も無い声。


だから最後に聞いてみた



「波瑠は、どうするの?」


「知らねぇよ」



その答えを聞いた瞬間体の全体重を後ろに傾けて走る足を止める



「…あんた、誰。」



この人は蓮じゃない、蓮の格好で蓮の髪色で同じ声。


だけど、蓮じゃない。


確信を得たのはさっきの問いかけに対してまるで虫けらのように言い放った。


蓮は周りに冷たいように見えて多分1番仲間思いで優しさを持ったやつだから。
こんなふうに答えるのはありえない。



「ねぇ、誰なの」


「意外と鋭いんだね、騙せると思ったのに。」



その人がこっちを向く瞬間と同時に凄まじい殺気と衝撃が走った


べシャッと情けなく、コンクリートの上に倒れ込む


殴られる、のは辛うじて分かるけどその人の顔が避けることを許さなかった。



ー…なんで、え、



その顔をマジマジと見ているあいだに馬乗りになられて簡単に動きを封じられる



「壊してあげる」



そういってあたしの首に手をかけてじわじわと力を入れてくる。


その顔をよく知っていた、いや、知っているようで知らない




ー……蓮と全く同じ顔…