「千晃、いつもの部屋に戻れ。」
考えにトリップしていると慎の声がした
「え?」
戻れって?
「もう用は済んだ。波瑠」
用は済んだ?ほんとになんのことかわからない
「千晃、部屋に行こう!」
波瑠は何を言ってるのか分かっていて、あたしの腕を引っ張るから慌てて立ち上がって付いていく
「いい子にして、待ってろ。」
あぁ、あの圧倒的笑みで言われたら質問できないなぁ。
そんなことを思いながらいつもの部屋に連れてこられた
「千晃、ここで待ってて!俺も戻らなきゃいけないからどこにもいかずここにいてね!絶対だよ!?」
「う、うん。わかった!」
あまりにも波瑠が迫ってくるもんだから急いで頷く
ガバッと腕を広げて波瑠は抱きついてくる
思わずあたしも受け止めると
「俺は慎の親衛隊隊長だから、あいつのそばにいなきゃいけない。怖い思いさせてごめんね?すぐ戻ってくるね。」
びっくりした、いつものフワフワした感じが全くなくて急に出てきた波瑠の男らしさに胸が騒ぎ出す
「うん、大丈夫だよ、それなら早く戻らなきゃ」
でも平常心のフリをして返す
「ありがとう!すぐ戻ってくるからね!」
あたしから離れてドアまで少し小走りで向かいながらこっちに向けてくれる笑顔はいつも通りで少しホッとした
波瑠がこの部屋から出て行って急に辺りが静かになる
「暇になっちゃったなぁ…。」
突っ立てってもしょうがないのでいつもの場所に座る
くるっと部屋を見渡してみると意外と広い
みんながいつもいるからそんなに広くは感じなかったけどやっぱり広いよなぁ…
何もすることがなくて暇を持て余す
やばい…、トイレ行きたいかも。
ここの部屋には男子便所しかなくていつも女子トイレに行くときは下に降りて外にあるのを使ってる。
今の状況で外に出るのは、なんか嫌だな…
ジロジロ見られるし見せ物じゃないんだけど、生理現象には限界というものがある。
「よし、仕方ない、行くか…」
裏戸から抜けて外に出る
トイレに近づいて行く度微かに女の話し声が聞こえてくる
なんか…険悪なムード?
おいおい、トイレでもやめてくれよ
これまた仕方ない、そっと入ってササッと済ませてこよう
意を決してトイレに入るとそこには見知った顔があってびっくりした
「ま、麻奈美!?」
ごってごてに着飾ったお姉さんたちに囲まれて居づらそうにしてたのは、あたしが一番よく知っている麻奈美だった
