言ってる意味が分からず、何も答えないあたしにしびれを切らしたのか少し貧乏ゆすりをする
「何、君能無しなの?僕の言ってることわかるでしょ?何のために僕たちを利用してるわけ?」
…は?利用してる?
それを言われた瞬間何が言いたいのか理解したのと同時にカッと全身に血が巡る
要は、慎たちのその立場を利用して何かしようとしてるんじゃないと。
あたしが何か企んでるんじゃないかと。
冗談じゃない。
「利用とかそういうつもりでみんなといるわけじゃないです。」
少しだけ睨みつけて返す
そうするとまた小馬鹿にしたように鼻で笑う
「へぇ?言い切るんだ。とか言いつつ女は信用できないからなぁ。僕は白田のバカと違って女に甘くないから。藤原たちが使い物にならなくなっても泣きついてきたりしないでね。」
カッチーン
「あんたみたいな女で一括りにして人のこと見ようともしない弱っちぃ奴に泣きつくようなことになるくらいなら自分で自分の身を守ったほうがマシね。」
「はぁ?今の、僕に向かって言ったのか!?」
あたしの言葉に逆上して黒崎が立ち上がる
それにつられてあたしもガタと立ち上がって額と額がくっつくくらいに睨みつける
大人気ないかもしれない、こんなこと言われて嫌味を返しておまけにピリつく空気にまでして。
それでも許せなかったのだ。
この、慎たちを見下した態度もいちいち燗に触る言い方も。
慎たちと一緒にいるのは立場を利用しようとかそんなんじゃない。そんなんじゃないんだ。
ただ、ただこの子たちの傍に時間が許す限り一緒にこの自由を楽しみたいだけだ。
馬鹿やって、さっきみたいに喧嘩して。
普通の友情を深めていきたいだけなんだ。
なのに、なのにどうして、こんな言われ方をされなくちゃいけないのか、悔しくて悲しくて違うとしか言い返せない自分に腹が立って
感情がごちゃ混ぜになって自分の手を強く握りしめる
それでも怯まず睨み続けているとふと握りしめていた拳に誰かが触れて黒崎から離れるように後ろに引っ張られる
「てめぇが思ってるような女じゃねぇよコイツは。」
その胸元にポスッと当たる瞬間と同時に発せられた言葉で気持ちが軽くなる。
あぁ、やっぱり蓮は優しい。
「へぇ、雨宮まで味方につけたのか、ちょっと興味湧いてきたな、千晃ちゃんだっけか?よく顔見せてみろよ」
ードンっ!
白田の言葉に何か叩く音が返される
「うぜぇ、話するんじゃねぇのか」
どうやらさっきの音は慎が拳をみんなが囲むテーブルに叩きつけたからだろう
「独り占めしすぎた。」
みんなを静かにさせた後一言だけ言ってあたしの腕を引いて座れと示す
だけど、その一言は誰に発してるのかいまいち理解できなくて頭をひねる
「そうだね、話を再開しよう。黒崎も早く席に座ってくれる?」
敦先輩がまだ立っている黒崎に促すとチッと舌打ちして静かに腰を下ろした
やっぱりこの2人は仲が悪そうだ。
お互いがお互いのことを嫌悪してる
それでよく同盟みたいなのを組もうと思ったのか不思議なんだけどきっと利点がお互いに合ったから妥協しているのだろう。
「大蛇のことなんだけど、それを指揮する存在がこの間接触してきたことはみんな知ってるよね?」
敦先輩の言葉にみんなが頷いた
そしてあたしも思い出す、あの冷たい眼をして蓮とそっくりな顔を持つ男を。
