美紀たちと仲良くなってから、私の学校生活が激変した。もともとクラスでも目立っていた三人。そんな中に私が入ったのは周りから見ても驚きだったみたいだ。ついこの間まで私のことを「七瀬さん」と距離を置いて話していた女子たちが、最近急に下の名前で呼び出した。やっぱり付き合う友達によって、自分の印象が変わるのだと感じる。

「司ーー!」
昼休み。教室の掃除をしているとドアのところで私を呼ぶ声が聞こえた。

「お兄?」

私には二つ上の兄がいる。兄は私とは違い社交的だった。身長もあったせいか一年生の時からバスケ部のレギュラーで校内ではちょっとした有名人だった。また兄の周りにも各部活、各分野の花形たちが集まっていたのだ。

剣道、陸上、サッカー、ピアノ、野球、バイクなどなど。

とにかく大所帯だった。兄の友達たちは私を本当の妹のように可愛がってくれたので、私も懐いていた。しかし、校内では私と兄が兄妹であることを知っている人はまだ少なかった。

「辞書の電池切れちゃったから貸してくれない?」

「あー、ちょっと待ってて。」

お兄に辞書を渡すと、チロルチョコを三つ貰った。

「ありがと!チョコはバレないようにね!」

そう言って兄は教室へ戻っていった。