その手を離さないで。



その夜赤木くんから電話が来た。

『七瀬ってバスケ部の部長と付き合ってるの?』

「なにいきなり。」

『この前その人の家から出でくるところを先輩たちと偶然見ちゃって。』

茉耶たちが言っていた噂って赤木くんたちからだったのだと思い、彼に聞いてみる。

「……その話広めてるのって赤木くんたちなの?」

『は?なにそれ。』

「付き合ってないし、その日は用事があって家行ってたし、そもそもそんなこと赤木くんたちに関係あるの?」

『いや、俺は』

赤木くんの言葉は耳に入らず、彼の言葉に被せ気味に話を続けた。

「そんなくだらないこと聞いてこないで!事実と違うことなんだから他の人たちに広めないでよ!本当に信じられない!」

怒りに任せて一方的に電話を切った。