その手を離さないで。



試合の日が近づく度にお兄の口数は減ってきた。結局慶大くんは医者からドクターストップがかかり、試合には出られなかった。


この試合を勝ち進んだとしても、慶大くんは出られない。あの時の私はお兄にも、慶大くんにも掛ける言葉がなく、ただただ二人を見ていることしかできなかった。



試合は平日に行われるので、応援へ行けずその日一日ソワソワしていたのを今でも覚えている。


「司、バスケ部の結果知ってる?」

「まだ連絡きてない。あとで職員室に行こうかと思ってる。」

「私たちも一緒に行こうか?」
美紀たちが心配そうに言ってくれた。

「大丈夫大丈夫。一人で行ってくるね。」