その手を離さないで。



帰り道にあるコンビニでココアを買っていたとき、部活帰りのお兄に会った。

「こんなところでどうした?」

「あー、友達の家に行ってて!」

お兄は「そうなんだ」とだけ答えて黙ってしまった。きっと慶大くんのことを考えているのだろう。

「今日ね、学校帰りに慶大くんに会った。」

「そっか。どんな感じだった?」

「いや、普通にいつも通りだったけどなんで?」

「別になんでもない。」


家に着くまで私たちはお互い一言も話さなかった。