その手を離さないで。



『メール読んだ?』

「読んだよ、大丈夫?」

検査結果は右太腿の肉離れと右足首の靭帯損傷。

『礼には言わないでほしい。』

「お兄に?」

『大会前だし、アイツ絶対心配するから。』

「でも、、、」

『大丈夫。タイミング見て俺からきちんと話すから。』

「わかった。大会には出られるの?」

『分からない、、、』

慶大くんの辛そうな声を聞いて、胸が潰れそうになった。今度の大会が3年生である慶大くんたちの最後の大会になる。この結果次第で、高校の推薦も決まってくるようだ。



『今から会える?家まで迎えに行くから。』

「私がそっちまで行くよ。だから待ってて。」

『分かった。』


親に出掛けてくることを連絡して、家を出た。


10分ほど歩くと慶大くんの家に着いた。
チャイムを鳴らすと慶大くんのお母さんが出てきて、慶大くんの部屋へ案内してくれた。

「お邪魔します。」

「制服のままじゃん。」

「着替える前だったから。」

このあと特にお互い話すことなく沈黙の時間が続いた。