その手を離さないで。



唯はクラスの人気者だった。明るくて男女の隔たりなく接するところが私も好きだった。









帰り道ー

学校沿いの並木道を歩いていると後ろから私を呼ぶ声が聞こえた。
振り向くと慶大くんが、遠くの方から手を振っていた。

「久しぶりだな、司。」

慶大くんはお兄の友達で、バスケ部の部長だった。ハスキーボイスが特徴的で、シュッとした顔立ちをしていた。

「今日部活ないの?」

「部活出てたんだけど、怪我しちゃって今から病院行くんだよね。」

「え!大丈夫なの?」

「まー多分平気だよ。」

そう爽やかに言っているけど、実際には足を引きずりながら歩いていた。


「司が入学してから全然会ってなかったな。友達できた?」

「大丈夫、できたよ。」

「心配してたんだよ、俺たち。」

「それはどうもありがとう。」

「教室移動の時とか、お前一人で歩いてるから。」

「あー、友達できたの最近だから。」

「いじめられてるんだと思っていた。」

「冗談でしょ、それ。」

「まぁな、お前はやり返しそうだもんな。本性があるからな。」

「やり返さないよ、本性ってなに。」

「いじめられたら、絶対に言えよ。」

「はいはい、ありがと。」

そうして話していると病院との分かれ道になり、私たちは別れた。