「いや、イギリスにはあの厄介な探偵がいる。私がそっちに行こう。それまで、その女を監視していてくれ」

電話の声に、どこか聞き覚えがあった。どこで聞いた声だったかな……。こんな時なのに誰だったかを思い出そうとしているなんて、どうかしている。

「わかりました」

男性がそう言い、電話を切る。そして私に「行くぞ」と声をかけた。私はフラフラした足取りで歩き出す。どこに連れて行かれるんだろう……。

キンッと音がして、私は音のした方を見る。男性の持っているナイフが何かに弾き飛ばされていた。これには、男性も目を丸くしている。

「グアッ!」

男性が何者かに蹴り飛ばされ、ズルズルとその場に崩れ落ちる。気絶したみたいだ。

「お怪我はありませんか?マドモワゼル」

私の手が優しく包まれる。私の目の前にはルパンさんがいた。ルパンさんが助けてくれたんだ。

「どうして……」

私の声が震える。ルパンさんは優しく私に触れた。

「見守ると決めましたから」

私の目から、涙があふれ出す。私は「ありがとうございます、ありがとう……ございます……」と言いながら、ルパンさんに触れられながら泣き続けた。