先輩の彼女

「……どうも。」

一応お礼を言って、私は右奥にあるコピー機を目指す。

ああ、この壁の奥は、さっきまでいた編集部だ。


急に懐かしさが込み上げる。

でもそんな感傷に浸っていられない。

私は今から、資料を10部、コピーしなければならないのだ。


「えっとー。ここにセット。はい、スタート。」

ボタンを押してすぐ、資料がグチャっと言う。

「うわっ!」

慌てて資料を外して見ると、今最新の針を使わないホチキスで、資料が留めてあった。

「あーあ。」

こうなると、一枚一枚外さないと。

って言うか、資料の1枚目。

クシャクシャになっているけど、これでコピーできるかな。


「おまえ~!」

「へっ?」

後ろを振り返ると、間野さんが睨みながら、私を見ている。

「ひっ!!」

「俺が作った営業資料を、よくもそんなふうにしてくれたな~。」

「す、すみません!」

異動初日から、怒らせた?