先輩の彼女

よいしょと、景気をつけて歩いて来たけれど、実際のところ、営業部は同じフロアにある。

しかもドアも、隣同士。

異動なんて、簡単なものだ。


「緊張するな。」

段ボールを太ももで押さえ、空いた手でドアを叩いた。

「失礼します。」

ドアを開けた先は、書類だらけの編集部とは雨って変わって、とても整理された場所だった。

「あのー。」

近くを通った人に、話しかけてみた。

「なに?」

いかにもお偉いさんと言う人だ。

「私、来週からこの営業部でお世話になる、斎藤……」

「ああ!もう来ちゃった!?」

言葉が詰まる。

えっ?

まだ来ちゃダメなの?


「……月曜日、出直して来ます!」

お偉いさんに、クルっと背中を向けた時だ。

「あっ、待って!おい!間野!」

そのお偉いさんは、誰かを呼んだ。

「はい。」

「異動になった子、今日早速来たぞ!」