先輩の彼女

間野さんはお店を出ると、クルっと振り返った。

「俺、こっちだから。」

「はい……あっ!ご馳走さまでした!」

私はお店のショーウィンドウの前で、間野さんに頭を下げた。

「今度は、私の奢らせて下さい!」

「いい。」

あっさり断られ、少し前までの楽しさは、何だったのかと思ってしまう。

「午後も頑張れよ。」

「はい。先輩も。」

「おう。」

間野さんは、後ろ向きで手をヒラヒラさせながら、歩いて行ってしまった。


迷惑だったのかな。

私とお昼食べるなんて。

嫌だったのかな。

私の面倒を見るなんて。


本当は……

私の隣の席だなんて……


その時、私の携帯が鳴った。

着信を見ると、そこには懐かしい名前が。

「もしもし?」

『あっ、久実?久しぶり。元気?』

「元気だよ。絹花は?」

それは大学時代からの親友の、蒼井絹花からだった。

『元気、元気。そうだ。今日暇?久しぶりに、飲みに行かない?』