先輩の彼女

「はい。天ざる二つですね。」

待って。

天ざるって、ざる蕎麦よりも500円高いんですけど!!

「いいから。差額は俺が払うから。」

「先輩……」

「初日から頑張ったご褒美だ。」

やった。

奢ってもらう事が嬉しいんじゃなくて、間野さんからご褒美を貰えるのが嬉しい。


「先輩は、午前中で書店周り終わったんですか?」

「いや、あと1件残ってる。」

「それが終わったら、どこかで寝てくるんですか?」

「いや、この時間だし。会社戻って早めに仕事終わらせて、帰らせてもらうわ。」

私が質問して、間野さんが“いや”と答える。

狙ったわけじゃないのに、見事にセットになっていて、心なしか笑える。


「お待たせしました。天ざる二つでございます。」

運ばれてきた天ざるのセットに、テーブルは一杯になる。

「豪華ですね。」

「だろ?これで嫌な事も、吹き飛んだろう。」

間野さんは、優しい。