先輩の彼女

「先輩。すみませんでした。」

『何が?』

「先輩のご好意を、無駄にしてしまって。」

また、間野さんからの答えはない。

あの書店でも、一緒。

いっそ、責めてくれたらいいのに。

お前が悪いって、叱ってくれたらいいのに。


『ふぁーあ。』

突然の間野さんの欠伸に、携帯を耳から離す。

この人、一体……

『斎藤。お前、今どこにいんの?』

「えっ……駅前の書店の近くです。」

『じゃあ、駅の中で昼飯食べようや。着いたら連絡する。』

「ちょっ……先輩?」

電話は一方的に切られた。


ツーツーと言う音だけが、虚しく響く。

「何なの!?」

でもその音が消えた時、私の顔は自然にニヤケ顔。

間野さんと、お昼ご飯を一緒に食べられる?

心臓が鳴っているのが、聞こえる。

落ち込んでいた気持ちが、一気に高揚する。

自分でも本当、げんきんだと思う。


「駅で待ってればいいかな。」

前髪を直しながら、私は駅方面に向かった。