先輩の彼女

あなたがもっと早く来れば、間に合ったかもしれないのに。

突き刺さる視線。

居たたまれなくなる。

「本当に、申し訳ございませんでした。」

「いいえ、斎藤さん。こうして持って来てくれたじゃないですか。仕方なかったんです。」

慰めてくれれば慰めてくれるだけ、惨めな気持ちになる。

「温かい言葉、有り難うございます。こちらの本は、引き取りますか?」

「ああ……もしかしたら、例のお客様がまた、お立ち寄りになるかもしれませんので、受け取っておきますね。」

「はい。では、また何かあれば、ご連絡下さい。」

「はい。」

また何度も頭を下げながら、書店を出た。

昨日から営業部に配属になったって言うのに、どれだけ人に頭を下げたんだろう。


もし私が、開店時間まで確認してたら?

もし私が、間野さんの事なんて考えずに、一目散に来てたら?

もし私が、朝礼が終わって、直ぐに会社を飛び出していたら?