先輩の彼女

「そ、そうですよね!」

返事をして窓の外を向く。

『工藤さん。ノルマだけは達成していたから。』

白石さんの言葉を、ふと思い出す。


もしかして、工藤さん。

この営業の鬼に脅されて、仕事をしてたんじゃないか?

だから早く、結婚したかった?

あり得る。


「……斎藤は、どうして出版業界に入ったんだ?」

高速を走りながら、突然始まった質問タイム。

「あっ、出版業界というか、漫画が好きだったんです。でも、私絵が描けなくて。」

「ほう。」

「だから漫画の編集、してみたいって思って。」

思い出すなぁ。

私、大学の時、同人誌の編集してたんだよね。

漫画好きな人が、自分勝手に描いた作品を、一冊の本にまとめて。

誰が表紙描くとか、載せる順番とか。

新しい作家さんとか、同人誌に引き込んでみたり。

楽しかったな。


「そっか。じゃあ、好きな事を仕事にできて、よかったな。」