先輩の彼女

なぜカバンを取りに行くだけの私より、車を取りに行った間野さんの方が、玄関口に早く着くのか。

つくづく頭を傾げながら、間野さんの車の助手席に乗った。

「飛ばすぞ。」

「えっ?」

「場所は隣の県だ。今日中に帰ってくるぞ。」

間野さんの顔を見ながら、私は息が止まった。

「今日中?」

「俺が眠くなったら、斎藤、運転変われよ。」


うっそおおお!

車の運転って、こんな街中、走った事ないんですけど!


不安になりながら、車は出発。

“飛ばすぞ”と言ってた通り、間野さんはどんどん、前の車を追い越して行く。

「あの……」

「なんだ?」

「どうして、そんなに必死なんですか?」

間野さんは、スピードを出していると言うのに、隣に乗っている私の頭を、グーで殴ってきた。

「痛いじゃないですか!」

「バカタレ!俺たちは営業だぞ?1冊でも多く本を売って、売上を作るのが仕事だぞ。」