先輩の彼女

その後、予定の書店3箇所回り、探していたタイトルの在庫は無し。

もう1箇所、間野さんの情報で行った書店にも、在庫は無くて、私達は疲れきった状態で、夕方会社に戻った。

と言うよりも、疲れ切っていたのは、私の方だけで、間野さんは朝と同じ状況。


「あれ?斎藤さん、やけに疲れてるね。」

私からの電話を取ってくれた、白石さんだ。

「もしかしてハードだった?初日。」

「ある意味、ハードだったかもしれません。」

「そっか。間野先輩、斎藤さんが編集部でレディースやってたって聞いて、期待したのかもね。」

「期待?」

私の心臓が、トクンっと小さく弾んだ。

「いや、最初の日ってさ。営業経験の無い人は、先輩について書店回りを経験するんだけどさ。自分の担当外の場所を見せられる時があるんだよ。」

「担当……外……」

「即戦力になると思ったのかな。自分の担当分野と斎藤さんの担当分野、一緒に回って直に教えるなんてさ。」