先輩の彼女

『僕、同じ営業部の白石です。どうしました?』

親切そうに言ってくれる白石さんには、大変申し訳ないんだけど、営業部の電話を営業部以外の人が取ってたら、それはそれで、驚くよ。

「実は探してほしい本があるんですが……」

『ああ、在庫確認?何てタイトル?』

「はい、待って下さいね。」

私はファイルを開いた。

「あれ?」

ない。

ここに挟んでおいたはずの、走り書きのメモがない!

『斎藤さん?』

「すみません、白石さん。架け直しても……」

慌ててる私から、間野さんが電話を奪った。

「本のタイトルは、“妖草”だ。」

『妖草……ですか?ちょっとお待ちを……』

しばらくの沈黙の後、間野さんの怒号が響き渡った。

「何が検索の結果ないだ!直接倉庫に行って探せ!何?探す時間がない?この役立たず!」

すかさす電話を切る間野さん。

「あっ!」

「何があっ!だ。お前もお前だ!メモを無くすなんて、俺がいなかったら、どうしてたんだ!」