先輩の彼女

「へえ。聞いた事あるのか?」

「いいえ。聞いた事ありません。」

「そうか。昔のタイトルかな。うちに在庫あればいいな。」

「はい。」

売れなくて引き取った本の在庫が、倉庫にあるはず。

あそこには、大抵のタイトルが置いてある。


「さあ、次行くぞ。」

「はい。」

私はその走り書きのメモを、ファイルに挟んだ。

「斎藤。」

「はい?」

間野さんは、訳も分からずまた薄い封筒で、私の頭を叩いた。

「そういう依頼が来たら、直ぐ様、会社に連絡して誰かに探させる。」

「今、頼むんですか?」

「探してなかったらどうするんだよ。ついでに今から行く書店にも、在庫がないか、一応聞く。」

「はい。」

さすが営業マン。

そこまで考えるんだと感心しながら、会社に電話をした。


『はい。東洋出版、営業部です。』

「お疲れ様です、斎藤です。」

『斎藤さん?ああ!異動したばっかの!』