先輩の彼女

「でもね、工藤さん。ブライダル物ばかり3冊持ってきて。」

「ブ、ブライダル!?」

「しかも主人公がしつこくプロポーズされるモノばかり。そんなに結婚したいんだ、と心の中で思いましたよ。」

工藤さんが……

あの工藤さんが?

あの地味で、合コンや男とか興味無さそうな工藤さんが!?

人は見かけによらないものだ。


「ところで斎藤さんは、結婚のご予定あります?」

「えっ?……今のところ、ないですが。」

「よかった。また結婚結婚言い出すような担当者だったら、どうしようかと思いました。」

「はははっ!」

こりゃ、まかり間違って結婚が決まっても、ギリギリまで言わない方がいいな。

ここらで、話題を変えよう。


「あっ、そうだ。お名前、伺ってませんでしたね。」

「そうでしたね。この書店でレディースコミックを担当したおります、矢田と申します。」

そう言って頭を下げる仕草は、落ち着いた色気を感じさせるものだった。