ちょっと無愛想で、少し地味で、随分意地悪で。

でも、彼女を大切にする、優しい人で。

しかも、後輩の面倒見が良くて……


「いえ、何でもないです。仕事行って来ます。」

「おい、斎藤!」

呼ばれても、立ち止まらない。

まさか、言えない。

“あなたが好き”だなんて。


「斎藤。」

間野さんが、呼んでも振り返らない、私の腕を掴んだ。

「やっぱり俺、車出すわ。今からじゃ、電車間に合わないだろ。」

「いいです。自分で行きます。」

「いいから、ここで待ってろ。」

会社に戻ろうとする間野さんの背中に、泣きながら叫んだ。

「自分で行くって、言ってるじゃないですか!」

息を切らしながら、涙を拭いた。

「いい加減にしろ!お前の為じゃねーんだよ!相手の店は、今日新刊の発売なんだぞ!少なくても午前中にPOPが届かないと、売り上げに影響があるんだよ!!」

あくまで仕事の為だと言う間野さんが、私は嫌いだ。