「このバカが!って思ったら、勝手に体が動いてた。」

胸の奥が、温かくなる。

「……偶然じゃなかったんですか?」

「偶然通りかかったら、無視するだろ。」


嬉しい。

間野さんに怒られてるのに、嬉しくてたまらない。


「気が済んだら、さっさと寝ろ。」

「はい。お休みなさい。」

頭の裏がくすぐったく感じる。

あの間野さんが、私を心配して、一人でお店に来て、私達を見張っていたなんて。


可笑しくてクスクス笑いながら、ベッドに入った。

寝返りを打つと、そこには絹花と間野さんの写真が。

二人で顔を寄せ合って、間野さんは絹花の頬に、チューしている。


途端に思い知らされる現実。

すぐ隣には、もう一つ枕がある。

たぶん、絹花が泊まりに来た時に、使ってる枕だろう。

このベッドには、絹花も寝ている。


胸が締め付けられた。

やっぱり私が、ソファに寝ればよかった。

苦しくなりながら、夜は更けていった。