先輩の彼女

髪の毛をバスタオルで拭きながら、間野さんは低い声で、こう聞いてきた。

「財布、触ったか?」

「いえ。」

「嘘つくな。位置がづれてる。」

ええ~!!

細かいところに、気づくな~!!

私がちらっと財布を見ると、間野さんはそれを、手に取った。

「レシート、見たのか。」

そ、そこまで!

もう、言い逃れはできない。

「すみません!」

私はソファの下の床に正座して、間野さんに謝った。


「いや、いいよ。」

それだけ言うと、間野さんはソファに、再び横になった。

「あ、あの……」

「いいから、お前も寝ろ。」

少し間を開けて、私は立ち上がった。

このまま、聞きたい事も聞けず、気になったまま、眠れるのか。

そんな訳ないと思った。


「先輩も、同じお店に来てたんですね。」

間野さんからの、返事はない。

「お友達とですか?レシート、別清算になってたんで。」