先輩の彼女

「……まだ、時間ありますか?」

「えっ?」

谷岡君は、掴んでいた私の腕を、ゆっくりと離した。

「僕の部屋、この近くなんです。よかったら、寄って行きませんか?」


えっ!?

へ、部屋に!?

それは……ダメでしょう!!


いや、ただ単に酔ってる私を、介抱してくれようとしてるだけなのかもしれないし。

こんな年下の男の子が、襲ってくると思うだなんて、勘違いもいいところ。


「久実さん……」

谷岡君の手が、私の肩を掴んだ。

そのままの勢いで、一歩前に出る。

「おい。」

その時、私の肩から谷岡君の手が離れていった。

「女を部屋に誘うなら、もっと若いお姉ちゃんにしろ。」

はっ?

聞き慣れた声に振り返ると、酔いが一気に冷めた。

「先輩!?」

とっくの昔に帰ったはずの間野さんが、私達の目の前にいた。

「間野さんこそ、何でこんな場所にいるんですか?もしかして、僕達の事、つけてたんですか?」