先輩の彼女

しまったと言う顔。

「僕、“久実さんとデートできる”って事で頭いっぱいで。そこまで覚えてなかった。勝手にお店決めちゃって、ごめんなさい。」

そして顔を押さえていた両手を、今度は顔の前で合わせた。

「いいのよ。私なんて、知ってるお店は定食屋とか、居酒屋とか、そんなんばっかだし。逆にお洒落なお店を紹介して貰えて、嬉しいよ。」

目の前の谷岡君は、しまったと言う顔から、笑顔に。

「優しい、久実さん。」

「そんな事ないって。」

「代わりに、この店。僕に奢らせて下さい。」

「えっ?」

改めて谷岡君を見ると、またニヤリとしている。

「そしたら、また久実さんとデートできるでしょ?」

私はカクテルを一口飲むと、前のめりになった。

「わざとでしょ?」

「いいえ。本当に忘れてたんですって。」

焦ってる谷岡君を見て、まあ、今回は許してあげよう。

「そうだ。僕、居酒屋行きたいな。」