先輩の彼女

まさかこんな場所で、同姓に会うなんて。

「宜しくお願いします。」

恒例の一礼をして、郵便局を去った。


「はあぁ。これで帰れる。」

「おいおい。これからデートなんだろ?」

「あっ!いけない。そうだった。」

私の肩が、重く感じる。

やっぱ仕事終わんないって言って、今日は帰らせて貰おうか。

でも何時になってもいいから、待ってると言ってた谷岡君。

やはりここは、行くべきなんでしょうな。


「お疲れ様、斎藤。」

「お疲れ様です、先輩。」

ビルの玄関口で、お互い向き合った。

何も言わずに、ずっと。

「どうした?斎藤。」

先に声を掛けたとは、間野さんの方からだった。

「いえ……」

そう言って、また間野さんを見てしまった。


別れがたい。

これがその気持ちなんだと、初めて知った。


「斎藤。週末はゆっくり休めよ。」

「はい。間野さんも。」

ここで別れないと。

でも足が動かない。