神様は私を愛しすぎです!

そんなおはらい町を通り抜け、紬は母に手を引かれながら歩いていく。鳥居をくぐり、いつも参拝する時に使う道を通っていく。

「お待ちしておりました」

しばらく歩いて行くと、袴姿の年配の女性が立ち入り禁止と書かれた札の近くに立っていた。母が頭を下げ、紬もペコリと頭を下げる。

「紬、こちらは伊勢神宮の祭主さんやで」

「えっ!?伊勢神宮のトップの人!?」

伊勢神宮には、他の神社にはない神職が存在する。それは、祭主と大宮司という存在だ。

祭主は、かつて制度化されていた天皇の代理としてお仕えする斎王の役割を兼ねているため、元皇族の女性が任命される。そして、祭主を支えるのが大宮司だ。

伊勢神宮のトップの人を目の前にし、紬は緊張が高まる。それが伝わったのか、祭主はニコリと微笑んだ。

「緊張しなくても大丈夫です。きっとアマテラス様も気に入ってくださいますよ」

「アマテラス様……」

紬は緊張でいっぱいになる。アマテラス様は、とても美しい太陽の女神様だと神話には書かれていた。そして母も、「素敵な女神様やで〜」と話していたが、神様であることは間違いない。変なことを言ってしまわないか、緊張が増してしまう。