神様は私を愛しすぎです!

母の表情はとても真剣なもので、紬はゴクリと唾を飲み込んで「何?」と訊ねる。次に母から言われた言葉は衝撃的なものだった。

「実は伊藤家では、代々伊勢神宮に祀られとるアマテラス様の使いにならなあかんのさ。それに選ばれたんが紬なんやけど、やってくれる?」

突然そんなことを言われ、紬は当然混乱する。

「えっ……。そんなこと急に言われても……」

霊感があるため、神様の存在を紬は否定しない。むしろ存在しているとわかっているのだ。日本には八百万の神と呼ばれる神々が大勢いる。火にも、水にも、大地にも、岩にも、桜にも神が宿っていることを感じる。しかし、その使いになれと言われた相手はーーー。

「アマテラスって、この国の最高神やん!!怒らせたら岩の中に閉じこもってしまうやん!!そんなん私には無理〜!!」

アマテラスは、太陽を司る最高神だ。なぜ太陽が一番偉いかというと、太陽は人間になくてはならない存在だからだ。一度、アマテラスが怒りのあまり岩の中に閉じこもった時には、世界が一瞬にして暗闇に包まれてしまったらしい。