三重県にある伊勢神宮。そこには今日も、お参りをするために多くの人が訪れている。いつも賑やかな場所だ。

レトロな雰囲気があり、おいしい食べ物などが売られているおはらい町を、巫女の衣装を着た女の子が通っていく。多くの人をかき分け、目的の場所までまだまだ遠いことに、伊藤紬(いとうつむぎ)はため息をついた。

巫女の衣装を着ているが、紬は伊勢神宮で働いているわけではない。紬はまだ高校一年生だ。

「クシュンッ!寒〜!!」

紬の言葉は、賑やかな人々の声にかき消される。今は十二月の初め。どの人も分厚いコートやマフラーをしていて、薄い白衣だけの紬は温かい格好の人々に羨ましさを感じながら歩く。

立派な鳥居をくぐり、奥へ奥へと紬は歩いていく。そして一般の観光客は立ち入り禁止の道へと入った。

綺麗に手入れされた石畳みの道を、紬は歩いていく。紬の吐く息は白く染まり、小柄な体は寒さで震えていた。

紬は足を止めず、目的の場所まで向かう。紬にはある役目があるのだ。それに逆らうことはできない。