瑞希お兄ちゃんから、「単車の2ケツで後ろに乗る時は、お地蔵さんみたいになれ!それがマナーだ!」と言われていたこともあって、極力動かないようにはしていた。
今、ヘルメットマンさんのバイクの後ろに乗っているわけなので、動かないようにしていた。
(というより、動けない・・・)
ギュウオォォォオン!ギュウオオ――――ン!
(めっちゃ飛ばしてるからね!!)
「待てコラ!!!」
後ろからついてきている速水君の声が、こだまのように響き渡る。
急いでいるので速いのは良いけど、事故だけはしてほしくないなー・・・
(神城さん達が。)
不思議と、ヘルメットマンさんが事故を起こすとは思えなかった。
すごく飛ばしてるけど、乗り心地はとても良かったのだ。
烈司さんの後ろに乗ってるみたいで―――――
「バイクの運転、お上手なんですね?」
単車の扱いに、なれているように感じた。
「・・・。」
「・・・。」
何度か話しかけているが、相手は、ヘルメットマンさんは答えてくれない。
(シャイなのかな・・・?)
照れ屋なんだと思いながら、周りの景色に目をやったところで気づく。
「あれ!?どこに向かってんですか!?」
「おい!そっちは違うんじゃねぇーのか!?」
後ろから、神城さんが指摘する声がした。
「はい、その通りです!違います!『吉野原』へ行く道は、ここじゃないですよぉー!?」
永山に指定された場所とは違う方へ、バイクは進んでいた。
「ヘルメットマンさん!違いますって!あ!?もしかして、トイレですか!?」
ヘルメットマンさんの耳元で叫べば、ハンドルを握っていた右手が動く。
相手はポケットに手を入れると、そこから引っ張り出したものを私に押し付けた。


