速水亜都子を人質にとられ、言われるがまま、車に乗った





「これをつけて下さい。」





私に声をかけてきた・・・助手席に座っている男がアイマスクを差し出す。

無言で受け取ってつける。





「着いたら肩を叩きます。そうしたら、マスクをとって下さい。」

「わかったわ。逆らわないからあっちゃんを、速水亜都子には・・・!」

「助かります。大丈夫です。速水亜都子さんには何もしません。」





同じ敬語でも、凛道蓮とは正反対。

不快でしかない。





(・・・・・・・・チョコちゃんには悪いことをしたわ。)





過去の忌まわしい出来事が原因で、暴走族も半グレも大嫌いだった。

似た名前だったから、龍星軍に嫌悪した。

暴走族の総長だと言わなかったチョコちゃんに・・・凛道蓮に、ムカついた。

怒りを抑えきれなくて、叩いてしまった。

なにも悪くない子供に平手打ちをした。





(最低ね、私・・・八つ当たりもいいところだわ。)





こんな私を、彼は怒らなかった。

それどころか心配していた。

私の身体目当てかと思っていたけど・・・百発百中の色仕掛けに、本気でドン引きされたのは初めてだった。





(あの子は1度もあたしに、怒ってるとは言わなかった。)





それどころか、助けようとしてくれた。





(何度も、何度も、助けようと・・・)





だから余計に自分が恥ずかしかった。





(・・・今さら後悔しても遅いわね。)





今できることは、あの時と同じ。あっちゃんを守ること。

私の身体は汚れてる。

だからどれだけ汚れても同じ。

あたしはどうなってもかまわない。

初めて私に好意を持ってくれた同性が速水亜都子ちゃん。

あっちゃんは、この子だけはあたしが守る。




そう何度も自分に言い聞かせた。