「行きますよ。」
「あ、ああ!」
なにも考えられなくて、美涼に言われるがまま、隣接する非常階段へ走る。
非常階段の戸をあけた時、美涼が指差す。
「あのグレーのワゴンまで走ってください。味方です。」
「マジか!?わかった!」
その言葉を信じて走った。
全力で走る。
「はあーはあー!」
(苦しい!息できねぇ!)
久々にダッシュするから、肺が悲鳴をあげる。
(ちくしょうちくしょう凛道蓮め!全部あいつのせー!)
「あいつのせいだ!!放せよ、ちくしょー!全部あいつのせいだくそグレートめ!」
「!?」
突然、俺を呼ぶ声が響き渡った。
姿は見えないが上からだ。
「グレートの裏切り者!!」
「間一髪でしたね。あのままあそこにいたら、グレートさんも捕まってましたよ。」
「・・・ああ、ナイスだ美涼。」
「ありがとうございます。」
「クソグレート!クソグレート!あたしを置いて、一人で逃げやがって!!!」
「ふふ!」
「なに笑ってんだ、美涼!?」
「だって、一人で逃げたとバカ女は騒いでますが・・・グレートさん、私と二人ですよね?」
「ぷっ!それもそうだ!やっぱバカはバカだな~!」
クスッと笑う美涼に、俺も笑い返す。
そんなやり取りをしつつも、目的の車に近づく俺達。
「こっちだ!早く乗れ!」
そんな声と共にワゴンのドアが開く
手をさしのべてくる知らない男。
その手をつかめば、すごい力で引きずり込まれた。
同時に、ワゴンが動きだした。
「走れ。」
美涼が乗り込み、ドアを閉めた時、車はゆるやかに走り出していた。
ゆっくりしたスピードにあせった。
「おい!なんで飛ばさないんだ!捕まるぞ!?」
「逆です、グレートさん。警察の突入現場で飛ばせば、目立ちます。」
美涼の言葉に舌打ちする。
「それもそうか・・・!!」
「検挙されるのが早かったな、永山グレイト?」
その声にギクッとした。
「あ、あんた!!?いや!あなたがどうしてここに!?」
助手席に『その人』がいた。


