彼は高嶺のヤンキー様6(元ヤン)




「行きますよ。」

「あ、ああ!」



なにも考えられなくて、美涼に言われるがまま、隣接する非常階段へ走る。

非常階段の戸をあけた時、美涼が指差す。





「あのグレーのワゴンまで走ってください。味方です。」

「マジか!?わかった!」





その言葉を信じて走った。

全力で走る。




「はあーはあー!」

(苦しい!息できねぇ!)




久々にダッシュするから、肺が悲鳴をあげる。





(ちくしょうちくしょう凛道蓮め!全部あいつのせー!)




「あいつのせいだ!!放せよ、ちくしょー!全部あいつのせいだくそグレートめ!」


「!?」





突然、俺を呼ぶ声が響き渡った。

姿は見えないが上からだ。





「グレートの裏切り者!!」




「間一髪でしたね。あのままあそこにいたら、グレートさんも捕まってましたよ。」

「・・・ああ、ナイスだ美涼。」

「ありがとうございます。」



「クソグレート!クソグレート!あたしを置いて、一人で逃げやがって!!!」




「ふふ!」

「なに笑ってんだ、美涼!?」

「だって、一人で逃げたとバカ女は騒いでますが・・・グレートさん、私と二人ですよね?」

「ぷっ!それもそうだ!やっぱバカはバカだな~!」





クスッと笑う美涼に、俺も笑い返す。

そんなやり取りをしつつも、目的の車に近づく俺達。





「こっちだ!早く乗れ!」




そんな声と共にワゴンのドアが開く

手をさしのべてくる知らない男。

その手をつかめば、すごい力で引きずり込まれた。

同時に、ワゴンが動きだした。





「走れ。」




美涼が乗り込み、ドアを閉めた時、車はゆるやかに走り出していた。

ゆっくりしたスピードにあせった。





「おい!なんで飛ばさないんだ!捕まるぞ!?」

「逆です、グレートさん。警察の突入現場で飛ばせば、目立ちます。」




美涼の言葉に舌打ちする。







「それもそうか・・・!!」


「検挙されるのが早かったな、永山グレイト?」







その声にギクッとした。






「あ、あんた!!?いや!あなたがどうしてここに!?」






助手席に『その人』がいた。