彼は高嶺のヤンキー様6(元ヤン)



こちらに背を向けたまま、器用に手だけのばして、私のスマホを没収しようとする関西男子。


「うははは!!カバディ!カバディ!!」

「背中に目がついてんのかよ!?てか、カバディってなんなの!?なにその鬼ごっこみたいな動き!?」

「うははは!!インドの坊さんがお供えを狙う猛獣相手に生み出した格闘技や!」

「俺は猛獣ってかっ!!?」

「うははは!!ウケるぅ~!!しゃーないなぁ!そこまで抵抗するなら、今回は痛い目見る方がええな?」



渡すまいと頑張れば、あっさり相手はあきらめてくれた。


「痛い目って・・・そんな、おげさな・・・」

「うははは!自分が巻き込まれんために、他人を簡単に差し出せる奴なんぞ、信用できへんわー!」

「反省はしてましたよ?」

「そりゃあ、そういわへんと~菅原さんが助けてくれんやろうー!?ホンマ自分、お人好しやでぇー!?うははは!ウケるぅ~!うはっはっはっ!!」

「別に僕は・・・」

「うははは!まぁええわ!茶ぁーしばかへんか!?のど乾いたやろう!?」

「え!?」


急に話題を変えるヤマト。

私に背を向けたまま、ペットボトルを差し出してきた。


「ええ!?どこから取り出して――――――!?」

「うははは!!気にせんと!飲め飲め!ふぉぉおおおおおぉぉぉ――――♪」

「あ・・・ありがとう、ヤマト・・・」


騒がしい親友に、これ以上の追及をあきらめる。

お礼を言いながら受け取り、渡されたペットボトルのキャップを開けて口づける。


(まぁ・・・たくさんしゃべってのどが渇いていたから嬉しい・・・)


相手の気遣いに、正直、心がホッとする。


「ごちそう様です。暑かったから、冷えたお茶が美味しい・・・」


どこから取り出したのか、いつ買ったのかわからないが、ヤマトのくれた飲み物は私の体と心を潤した。


「うははは!ほなよかったわー!遠慮せんと、全部飲みきりや~!」

「はい、ありがとうございます。」

「他にも買ったねん!これ!これも飲んでみ!これこれ!うははは!」

「え?まだるの?ありがとう・・・。」


驚いたけど、差し出されるままに受け取る。

押し付けられたのは、缶に入ったドリンク。

触った感覚で冷たい飲み物だとはわかった。