こちらに背を向けたまま、器用に手だけのばして、私のスマホを没収しようとする関西男子。
「うははは!!カバディ!カバディ!!」
「背中に目がついてんのかよ!?てか、カバディってなんなの!?なにその鬼ごっこみたいな動き!?」
「うははは!!インドの坊さんがお供えを狙う猛獣相手に生み出した格闘技や!」
「俺は猛獣ってかっ!!?」
「うははは!!ウケるぅ~!!しゃーないなぁ!そこまで抵抗するなら、今回は痛い目見る方がええな?」
渡すまいと頑張れば、あっさり相手はあきらめてくれた。
「痛い目って・・・そんな、おげさな・・・」
「うははは!自分が巻き込まれんために、他人を簡単に差し出せる奴なんぞ、信用できへんわー!」
「反省はしてましたよ?」
「そりゃあ、そういわへんと~菅原さんが助けてくれんやろうー!?ホンマ自分、お人好しやでぇー!?うははは!ウケるぅ~!うはっはっはっ!!」
「別に僕は・・・」
「うははは!まぁええわ!茶ぁーしばかへんか!?のど乾いたやろう!?」
「え!?」
急に話題を変えるヤマト。
私に背を向けたまま、ペットボトルを差し出してきた。
「ええ!?どこから取り出して――――――!?」
「うははは!!気にせんと!飲め飲め!ふぉぉおおおおおぉぉぉ――――♪」
「あ・・・ありがとう、ヤマト・・・」
騒がしい親友に、これ以上の追及をあきらめる。
お礼を言いながら受け取り、渡されたペットボトルのキャップを開けて口づける。
(まぁ・・・たくさんしゃべってのどが渇いていたから嬉しい・・・)
相手の気遣いに、正直、心がホッとする。
「ごちそう様です。暑かったから、冷えたお茶が美味しい・・・」
どこから取り出したのか、いつ買ったのかわからないが、ヤマトのくれた飲み物は私の体と心を潤した。
「うははは!ほなよかったわー!遠慮せんと、全部飲みきりや~!」
「はい、ありがとうございます。」
「他にも買ったねん!これ!これも飲んでみ!これこれ!うははは!」
「え?まだるの?ありがとう・・・。」
驚いたけど、差し出されるままに受け取る。
押し付けられたのは、缶に入ったドリンク。
触った感覚で冷たい飲み物だとはわかった。


