彼は高嶺のヤンキー様6(元ヤン)



「わかりました。これ、私のLINEです。」

「ありがとう!」

「しっ!静かにして下さい!まだ、近くにいるかもしれません。」

「あ・・・」


私の注意で、周囲を警戒する吉田さん。

ぶっちゃけ、声はしなくなったが、近くにいる気配はあった。


「早く交換しましょう。」

「ど、どうしよう・・・手が震えて・・・上手くタッチできな・・・」

「やりますから、貸してください。」

「ごめんね・・・迷惑かけて、ごめんね・・・!」

「いいんですよ。」


再び泣きそうになる吉田さんからスマホを受け取り、素早く私のLINE情報を入力した。


「出来ました。さあ、早く言って下さい。」

「あ・・・ありがとう。本当に・・・ありがとう、菅原さん。」

「いいですよ。気をつけて下さいね。」

「うん・・・。菅原さんも、気をつけてね。ありがとう。」

「うん、ありがとう。」


笑顔で言えば、相手もホッとしたような笑顔を見せる。


(懐かしい・・・)


低木に隠れながら、私から離れて行く吉田さんを見て思う。



(最初の委員会の頃には・・・よく見ていた明るい表情だ。)



私のいじめが始まってからは、能面みたいな顔と塩対応に変わったが・・・。


「仕方ないか。」


こういうことは、大人になればもっと増えるだろう。

いつもいつも、正直者が報われるとは限らない。

だからと泣き寝入りは出来ない。


(吉田さんもだけど、私自身のことも何とかしないとな・・・・)


そんな思いで、その場に立っていれば―――――――



「あれ、凛に死ねゆーた子とちゃうか~!?うははは!!」

「声が大きいですよ、ヤマト?」

(声を聞いた時、『これは間違いない』と思ったが―――――)


「うははは!ビーンGOぅ!!」

「だから、大声出さない!!」



いたのは、カチューシャとサングラスを身に着けた大柄の男子。

さっきの声を聞いた時点でわかっていた。

相手が龍星軍のメンバーにして、凛道蓮=菅原凛だと知っていて、凛が瑞希お兄ちゃんに片思いしているということをただ1人知っている大親友にして、同じ学校に通っていたるの五十嵐ヤマト君だってことに。



〔★にぎやかな関西弁男子が現れた★〕