「わかりました。これ、私のLINEです。」
「ありがとう!」
「しっ!静かにして下さい!まだ、近くにいるかもしれません。」
「あ・・・」
私の注意で、周囲を警戒する吉田さん。
ぶっちゃけ、声はしなくなったが、近くにいる気配はあった。
「早く交換しましょう。」
「ど、どうしよう・・・手が震えて・・・上手くタッチできな・・・」
「やりますから、貸してください。」
「ごめんね・・・迷惑かけて、ごめんね・・・!」
「いいんですよ。」
再び泣きそうになる吉田さんからスマホを受け取り、素早く私のLINE情報を入力した。
「出来ました。さあ、早く言って下さい。」
「あ・・・ありがとう。本当に・・・ありがとう、菅原さん。」
「いいですよ。気をつけて下さいね。」
「うん・・・。菅原さんも、気をつけてね。ありがとう。」
「うん、ありがとう。」
笑顔で言えば、相手もホッとしたような笑顔を見せる。
(懐かしい・・・)
低木に隠れながら、私から離れて行く吉田さんを見て思う。
(最初の委員会の頃には・・・よく見ていた明るい表情だ。)
私のいじめが始まってからは、能面みたいな顔と塩対応に変わったが・・・。
「仕方ないか。」
こういうことは、大人になればもっと増えるだろう。
いつもいつも、正直者が報われるとは限らない。
だからと泣き寝入りは出来ない。
(吉田さんもだけど、私自身のことも何とかしないとな・・・・)
そんな思いで、その場に立っていれば―――――――
「あれ、凛に死ねゆーた子とちゃうか~!?うははは!!」
「声が大きいですよ、ヤマト?」
(声を聞いた時、『これは間違いない』と思ったが―――――)
「うははは!ビーンGOぅ!!」
「だから、大声出さない!!」
いたのは、カチューシャとサングラスを身に着けた大柄の男子。
さっきの声を聞いた時点でわかっていた。
相手が龍星軍のメンバーにして、凛道蓮=菅原凛だと知っていて、凛が瑞希お兄ちゃんに片思いしているということをただ1人知っている大親友にして、同じ学校に通っていたるの五十嵐ヤマト君だってことに。
〔★にぎやかな関西弁男子が現れた★〕


