「今の自分の顔、鏡で見てどう思いますか?私から見ても、苦しそうな表情です。」
「え?だ・・・だからなに!?」
「苦しんでる人を、さらに苦しめるようなこと、私はしません。出来ません。自分がされたら嫌だから、出来ないんです。」
相手が苦しんでるとわかっていても、しつこくしつこく、嫌がることをしてくるのがいじめだ。
それがどんなにつらいか、一学期後半から今まで、嫌というほど思い知らされた。
「お願いします、吉田さん。」
やられた内容は違っても、彼女もイジメられていることに代わりはない。
だから、つらさと痛みはわかる。
「私に、吉田さんを苦しめるようなことを、させないで下さい。」
予備で持っていたハンカチで、吉田さんの目元の涙を拭く。
「菅原さん・・・!?」
「お願いします。」
ハンカチを相手の目元にあてたまま、頭を下げて頼む。
「吉田さんを苦しめるような真似を、私にさせないで下さい。いじめられるつらさを知っているからこそ、理不尽な攻撃で傷ついているあなたを追いつめたくありません。吉田さんは何も悪いことをしていないのですから。」
「うっ・・・!うわぁあああああああああ!!」
泣きながら、吉田さんが抱き付いてくる。
その体を両手でしっかりと抱きしめる。
「ごめんなさい!ごめんなさい!菅原さん!ごめんなさい!」
「いいんですよ。」
「ごめんなさい!ごめんなさい!私!!」
「つらかったですね。」
「うっう!うん!うん!うう・・・!」
いじめられていた女の子の背中を撫でながらあやす。
なだめる。
遠くで歌声が聞こえる。
始業式で歌われる校歌だろう。
そう予想しながら、出来るだけ優しく吉田さんを抱き寄せた。


