「手はつないでなきゃダメ!『仲良しの印』じゃない!?」

「え!?あ、ごめん・・・」

「そ・れ・に!手を離したって、暑いのは変わらないでしょ?」



そう言って握りなおした手を、私に見せながら笑う。



「ああ・・・・」



なんだろう・・・



「そう、だね・・・」

「そーだよ♪」



急いでるはずなのに。

集合時間には余裕で間に合うけど。

瑞希お兄ちゃんを堪能(たんのう)したいのに。

引き留められて困ってるはずだけど。



(なぜか、うれしい・・・・・)



そんな思いで、よっちゃんの手を握りしめる。



「えへへ!すがちゃん、イー感じ!」

「え!?そ、そうですか?」

「あー敬語!ダメじゃん!?」

「あ!?ごめん・・・!」

「うん、許したゲル♪」



そう言って、よっちゃんもまた、つながっている手に力を込めてきた。

暑いけど、照れ臭いけど、手をつないでることが嬉しかった。



「・・・ふふふ。」

「あはははは!」



どちらともなく声を出して笑う。

久しぶりの楽しい気分に満ち足りる。



「すがちゃん、もっと笑った方がいいよ~?可愛い顔してるんだから?」

「そ、そんなことは~よっちゃんこそ、笑顔が似合うよ?」

「ありがとう!すがちゃんのおかげで、あたしは笑顔だよ?」



ニッコリと笑い返してくれてホッとする。

そこで信号に引っかかる。

規則に従って止まった時、あるものが目に飛び込んできた。



「あ・・・」

「え?なに?あ、あれ?」



私の視線の先をたどったよっちゃんが、それを指さしながら聞いてきた。



「すがちゃん、あの映画に興味あるの?」

「え、いえ、その・・・」



私が目を奪われたのは、恋愛映画が表示されている広告塔。




(瑞希お兄ちゃんと一緒に見たハーレム系の恋愛映画・・・)




『あの人』のおかげで見ることができた――――――――




―チョコちゃん―




そこまで考えたら、脳裏に鳴海瑠華さんの姿がハッキリと浮かんだ。