全校生徒が体育館に集まっているということもあり、誰にも会うことなく校舎裏へとたどり着けた。
(ここまでくれば、大丈夫よね?)
周囲に生徒や教師がいないことを確認する。
「吉田さん、こっちへ来てください!誰も見てませんから。」
「う・・・うん。」
安全を確信してから吉田さんに声をかける。
手招きすれば、恐る恐る近づいてきた。
「こんな場所で悪いですが、かんたんな手当てをしましょう。『自前』ですが、すみません。」
「え?手当て?自前って・・・?」
「アイテムは持ってます。」
コンパクトサイズの、応急処置セットを見せながら言う。
いじめによる怪我をするおかげで、いつも持ち歩いていたのだ。
〔★装備している理由がむなしい★〕
「さあ、ここに座って。」
「・・・うん・・・」
「あ、その前に、汚れをとりましょう。」
手で軽く、吉田さんの制服の土を払ってから、傷の手当てをした。
ひどい傷にだけ、ぼんそうこうを貼った。
「どうして・・・助けてくれるの?」
手当てしていれば、怯える声で聞かれた。
「・・・痛そうだったから。」
無難な答えを返した。
特に理由はない。
(だって、気づいた時には、身体が勝手に動いていたから・・・。)
「これでいいよ。」
そう伝えて、ハンカチで制服の汚れを払う。
「なにも・・・聞かないの?」
「・・・・私がいじめられてること、知ってるでしょう?私から貴女に接触するような真似はできません。お互いのためです。関わらない方がいい方が良いでしょう?」
「ごめんなさい・・・」
そう伝えたら、頭を下げられた。
関りを持たないことについて、理解してくれたのだと思ったのだけど・・・
「菅原さんに『ひどいこと』言って、ごめんなさい・・・!!」
「え?」
「いじめる側に回って・・・!!」
(・・・あ、そっちか。)
吉田さんの言葉で、自分の解釈違いに気づく。
(『ごめんなさい』って、そういう意味の『ごめんなさい』か・・・。)
相手が言ってるのは、今日のことではなく、過去への謝罪だった。


