「凛、今日はお父さんもお母さんも遅くなるから、先にご飯食べちゃってね?」
「わかった。もしかしたら、友達とテスト勉強会するから、私も遅くなるかもだけど。」
「あら、前に話してた夏休み中に学力が下がってないか確かめる、新学期最初の学力テストの勉強会のこと?」
「うん。」
「だったら、夕食は作らないでお金を渡しておくわね。みんなと何か食べなさいね?」
「え?お弁当作っていくからいいよ。持ち寄りみたいにしようって話してるから。」
「だめよ!お弁当作る時間がもったいないわ!凛もお友達も!勉強時間にあてなさい!はい、お金!」
「・・・ごめん、お母さん。」
「そこはありがとうだぞ、凛?ほら、お父さんからもだ。甘い物を買って、糖分をしっかりとるんだぞ?おつりは、お小遣いにしていいからな!」
「ありがとう、お父さん。お母さんも、本当にありがとう・・・。」
「いいのよ。どういたしまして。」
「しっかり勉強しておいで。」
両親から現金を受け取り、何とも言えない気持ちで微笑む。
(嘘ついてごめんね・・・)
友達と勉強なんてしない。
そもそも、私に友達なんていない。
菅原凛に友はいない。
(・・・おつりは返そう。)
使ったように見せかけて、それらしい金額は返そう。
嘘がバレないための工作。
使ったいう設定の金額は、私の意思を無視する両親への慰謝料として『預かって』おく。
お金のことで嘘をついていることへの罪悪感は消えないけど―――――
(外に方法がないでしょう?)
「ごちそう様!行ってきます!」
「いってらっしゃい、凛。」
「しっかり勉強してくるんだぞ?」
「はーい!」
無邪気な声を出しながら玄関を出る。
お父さんもお母さんも知らない。
(私に友達がいないことを。)
友達がいないことに気づいてないのだから、わかるはずがない。
(私がいじめられていることに。)
気づくのを待つべきか、自分の口から言うべきか。
まだその答えを出せずにいる。


