「先生……痛いです」
おでこを擦っていると先生は、ハァッ……とまた
ため息を吐いた。だがフッと笑ってくれた。
あっ……笑ってくれた!?
「まったくお前らは……分かった、分かった。
彼女にしてやる。だが俺は、まだ妻のことを
きちんと断ち切った訳ではない。
それでもいいなら付き合ってやってもいい」
「本当ですか……先生!?」
本当なら嬉しい。
私にチャンスをもらえたということだ。
立ち直れなくてもこれからも変わることだってある。
だって……今も十分に先生の気持ちは、揺らいでくれた。
「良かったね。お姉ちゃん」
「うん。ありがとう睦月君」
まだ完璧の彼女でなくてもいい。これからいっぱい
頑張ってちゃんと愛してもらえるようになりたい。
前を向いて歩けるように……。
私は、そう胸に秘めて2人を見ていた。
それから睦月君は、また熱を出してしまったが
私と先生は、仮でも恋人同士になれた。
そして報道の方は、落ち着き元の生活を取り戻した。
先生がテレビや雑誌に出るようになったのと
報道陣は、別の結婚スクープなどで興味があちらに
行ったからだ。ちなみに先生の人気は、絶大だった!
あのルックスにテレビに見せる毒舌でワイルドな性格。
それにシングルファーザーでイクメン。
たちまち若い女性から年配女性まで多くの
女性ファンを増やした。男性にも人気が高いとか
私は、変わらず担当編集者をしつつお世話係をして
先生を振り向かせようと頑張っていた。
そんなある日のことだった。
「へぇー睦月君のところは、白雪姫をやるんですか?」
睦月君の幼稚園でやるお遊戯会は、
白雪姫に決まったらしい。
「はい。すでに練習を始めているんですよ」
保母さんである中川先生が教えてくれた。
白雪姫か…懐かしい童話だわ。
睦月君は、王子様役が似合いそう…。
「それで睦月君は、何の役を?」
「馬の役です」



