イクメン作家と恋心~完全版~(12/30大幅修正済み)


「……簡単に言うな。俺は、ずっと悩んでいるんだ。
睦月には、母親が必要だ。
聞き分けがよくてもコイツは、まだ4歳。
母親が恋しい年頃だ。現にお前…小野木に甘えている。
それは、分かっているのに。
再婚をしたら……沙織を裏切るのではないかって
俺のせいでアイツの人生を奪ったのに
俺が他の女と一緒になったら……アイツは、
報われないと思ったら出来ない」

先生は、苦しそうに話してくれた。先生……。
それは……私との気持ちに揺らいでくれたってこと?
胸がドクンッと高鳴った。しかし睦月君は、
「僕は……別にママを恋しがっていないよ?」と
首を傾げながら言ってきた。

えっ……?
私と先生は、驚きながら睦月君を見る。
すると睦月君は、きょとんとしていた。

「僕……ママのこと覚えてないし。
覚えてないのに恋しがれないよ?
他の子のママは、別のママだし……別に
居なくても困らないよ。パパ居るし」

「睦月……」

「あ、でもお姉ちゃんは別ね?
お姉ちゃんは、お姉ちゃんだからママの代わりに
なってもらおうなんて思わないよ。
ただお姉ちゃんにそばに居てほしいだけ」

何ともドライな回答が返ってきた。
私も先生も睦月君の言葉にさらに驚かされた。
睦月君は、母親を恋しがっていなかった。
それは、覚えていないからで
でも、私を必要としてくれていた。

「睦月君……それでいいのか?」

「ママが2人になったら……2倍お得だね」

「お前……ポイントカードみたいに言うなよ」

先生は、呆れたようにツッコミを入れてきたので
何だか笑えてきた。
フフッ……ポイントカードって……可笑しい。
睦月君は、冷静に見えて意外と天然なのかもしれない。

「小野木。お前……笑うなよ!?」

「す、すみません。でも……睦月君が一番
しっかりしてるかも……」

フフッとまた笑いがこぼれてしまう。
すると先生は、呆れたようにため息を吐くと
私のおでこにデコピンをしてきた。い、痛い……。