「は、はい。お、小野木涼花です。
クローバー社の編集者として蓮見……藤崎先生の
担当をさせて頂いています」

私は、慌てて自己紹介した。
心臓が飛び出しそうになるぐらいに緊張してしまう。
すると寝ていた奥さんのお父様が
「ふん。お前か……」と呆れたように口に出した。

「あなた……」

「私は、話などない。お前が話したいと言うから
許しただけだ。積もる話があるなら外で話せ。
私は、眠いんだ……」

そう言うと布団の中に潜ってしまった。
まだ、許してないんだ……先生のこと。
突き放す言葉に複雑な気持ちになる。

「もうあなたったら……」

奥さんのお母様も呆れたようにため息を吐いた。
仕方がないので廊下にある自販機に行き少し話をした。
お母様は、近くのベンチに座る。睦月君も
私と先生は、立っていた。するとお母様が
申し訳なさそうにする。

「主人が色々と迷惑をかけてごめんなさいね。
沙織にも…悪い事をしてしまったわ」

「いいえ。勝手な事をしたのは、俺達です。
お義父さんが俺を許してくれないのも無理はない。
俺のせいで沙織を早く死なせてしまったから」

先生は、暗い表情で言った。
違う……先生が悪い訳ではない。
仕方がなかったのだ。寿命は、誰も逆らえない。

「あの……お言葉を返すようですが違うと思います。
先生は、心の底から奥様を愛しています。
ずっと、ずっと…今でも忘れずに。だから」

胸を苦しくなる。
でも、伝えなくちゃあ……。

「先生にココまで愛されてる奥様は、幸せ者です!
こんないい子で可愛い息子を産まれたし
病気は…残念でしたが先生のせいではありません」

誤解をしたままなんてダメよ!
ちゃんと和解をして欲しい。今でも遅くはない。
きちんと話して誤解を解いてほしいと思った。
他人の私が言う事ではないけど……。

「えぇ、分かっているわ。主人も」