「小春が一人で大丈夫って言うんだ。そう言うなら、仕方がないだろ。お前を監視しないと」



 先ほどまでの殺意が消えたかのように、仁は普段通りの尊大でゆったりした口調でそんなことを言う。


 俺の憎しみは消えることはない。


 体中が悲鳴を上げているが、それ以上に憎しみが溢れ、自由の利かない身体に苛立ちを覚えた。



「……離せっ!」



「ガキ黙れ。お前に選択権なんてない。そもそも、何をするつもりだ?俺を殺すとか?それは無理だぞ」



「うるせぇんだよっ!」



 の違和感を覚えながらも、叫ぶと、仁は俺の首へと手をかけた。



「すみません。こいつうるさくて。どうしようもない馬鹿なんで」



 タクシーのおっさんに、ニコニコ笑う仁の余裕が憎い。


 こいつには思い通りにならないことなんか存在しないのだ。


 だから、あがく俺を下に見ている。


 もがいてあがいている俺を嘲笑っているのだ。


 いつでも、そうだった。


 だから、こいつが嫌いだった。


 憎くて、心のどこかでずっと殺してやりたいと思っていた。