「クソガキっ!」



 脇腹に膝蹴りを喰らわされ、そのまま塀へと頭を叩きつけられる。


 一方的な暴力。


 抵抗したくても、身体が動かなかった。







「……お、お前が、いるから、そのせいで、水野は……」


 掠れる視界と朦朧とした意識の中で、仁への憎しみから言葉が口を吐く。


 そんな言葉も最後まで続かず、首を締め上げられる。



「小春の名前を呼ぶな。その汚い口は閉じろ」


 俺の憎しみが仁にも宿ったかのように、仁の瞳は俺への憎しみを表していた。


 本当に殺すつもりなのではないかと、首を絞められ、浅くなっていく意識の中、本能的に感じた。


 だが、首から腕は外され、大きく咳き込みながら崩れ落ちるように倒れ込む。


 空気を吸い込もうと喘ぐが、咳でほとんど吸うことはできなかった。


 口内の砂利と血が器官に入り余計苦しくなる。


 あまりの苦しさに、そのまま意識を手放しそうになったが、首根っこを掴み上げられ俺を無理やり立たす。



「は、はな、せっ!」



「馬鹿だろ、お前。いや、下劣で世界一くだらない馬鹿猿だ。そんなやつを野放しにするわけないだろ」



 途中で見つけたタクシーを止め、俺を放り込む。


 手負いの俺に抗う術などなかった。


 ジリジリと焼け付く憎しみだけが俺の中で鮮明で。